2014年3月12日水曜日

no.602 o-mizu-tori

数年前、突然「お水取り」が観たくなって、厳寒の奈良にひとり向かったことがありました。
お水取りとは、3月12日の深夜(正確には13日の午前1時半くらい)、東大寺二月堂の
前庭にある若狭井という井戸から、ご本尊の十一面観音にお供えするお水、お香水(おこう
ずい)を汲み上げる儀式のこと。
3月1日から二週間に渡って行われる「修二会」と呼ばれる一連の儀式の中でもクライマ
ックスの日です。
なにより圧巻なのは、修行をされているお坊様達(練行衆)の道明りのために松明に耿々と
火が灯され、高台に建つ二月堂の廊下を練り歩く炎の乱舞。
春の風物詩。


修二会は、元々752年、東大寺の開祖良弁僧正(ろうべん)の高弟実忠和尚(じっちゅう
わしょう)によって創始され、連綿と途切れることなく続けられて、今年で1263年目を
迎えています。すごい…。
私たちが日々の生活の中で犯している過ちをご本尊の十一面観音様に懺悔するという趣旨の
儀式ですが、元来、国に起こる天災、疫病などの災いは国家に起こる病いと考え、それらを
祓い、鎮護国家・天下太平・風雨順時・五穀豊穣・万民快楽を願うものなのだそう。
奇しくも3月11日のあの日の翌日も、この奈良の地で「祈り」が捧げられていたんだな。
いまほど、これらの願いが身に迫って切実な想いになる時はない。

今宵もまた、あの荘厳な炎のお祭りが行われます。
どうかあの凄まじい炎で悪しきものを祓い尽くし、全ての人々とこの国が、そしてひいては
万国の人々が心安らかに幸せでありますように。


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