2016年3月8日火曜日

no.900 kusa-makura

今日は春の陽気!
外出先から帰宅後、掃除をして、ソファで本を読み始めました。
夏目漱石の「草枕」
この時期にぴったりの本。漱石の作品の中では私はこれが一番好き。
漢文やら故事に基づく比喩やらが目白押しの一見難しい小説ですが、リズムがあるので慣れ
るととても読みやすい。
なにしろ20代の頃この小説にはまった時に、うしろの索引と首っ引きで読み込んだからね。
いま読んでもほとんど一人称のように、登場人物の画工と同じ目線で同じ早春の風景を見て
いる気分になれます。

熊本の小天温泉。
小説の中では那古井の温泉場となっているところ。ここにも車を飛ばして行ったなぁ。
漱石が泊まった前田案山子の別邸の一部が残っていて、小説に出て来る石組みのお風呂場や
漱石が泊まった部屋も残されてるの。
海から穏やかな風が吹く、眺めのいいところです。みかんの段々畑があって。


この時は熊本のホテルに泊まっていたので小天温泉には泊まらずに帰りましたが、小天には
那古井館という旅館があって、そこではどっぷりと草枕の世界に浸れるんだそう。
今度は絶対泊まってみよう。草枕の単行本を持って。

熊本の漱石の内坪井町の旧居跡。
小説「坊ちゃん」で有名になった最初の赴任先の松山のあと、熊本の五校に転任した漱石が
一家を構えた場所。このあと漱石はロンドンへ旅立ちます。


奥様の鏡子さんの口述筆記で出された本「漱石の思い出」には、ここ内坪井町の家が熊本で
一番いい住居だったと書かれています。
確かにゆったりとした風通しのいい明るいお宅だったな。
ここで最初のお子さんの筆子さんが生まれています。産湯に使わせた井戸もあって。

草枕の英訳本のタイトルは「Three Cornered World」
本文中にある「四角な世界から常識と名のつく、一角を磨滅して、三角の内に住むのを芸術
家と呼んでもよかろう」を踏まえたものだとのこと。
あのグールドの人生最後の夜に、枕元に置いてあったというこの本。
わたしはグールドが好きで、漱石、特にこの草枕が好きで、漱石は神経を病んでしまうほど
ツラかった滞在だったようだけど彼の赴任先のロンドンが好きで。
なんだか見えない一本の線でつながっているな〜なんて思う。
読みながら、時にいろんなことを思い出したりしていたら、いつの間にかソファでうたた寝。
ほら。春ですから(笑)

目覚めたらリビングは、もうすっかり、あと少しで春の宵…という美しい時間でありました。


今年最初の春の夕暮れ。


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