2013年5月20日月曜日

no.443 dedication

先日の骨董市で買って来た小ぶりの芙蓉手のお皿の「継ぎ」に入りました。
江戸中期から後期。
一度こなごなに割れてしまったのでしょう。
二つともすごく丁寧に、上手に「ガラス継ぎ」がしてあります。
使用中に不意に割ってしまったのか、もしかしたら夫婦喧嘩で割られてしまったのかも...。
丁寧に継がれたあとを見ていると、このお皿が体験してきたいろいろなことを話してくれて
いるようで時間を忘れます。


焼き継ぎとも呼ばれるガラス継ぎ。
久保先生のお話だと、江戸時代、天秤棒に七輪と道具箱を下げて町内を呼び声をかけながら
歩き、継いで回っていた職人さんがいたとのこと。
その人達がやっていたこのガラス継ぎは、もう今ではその技術が廃れてしまって「幻の技法」
なのだとか。
どんな人が継いだのか。
この器を手にするその人の手の温もりや、ためつすがめつ傷を見て慎重に継いでいく姿が目に
浮かんできて、器に対する愛情が伝わってきます。

でも、この古い継ぎのままだと食べ物を盛るのをちょっと躊躇するくらい古びてしまっている
ので、気になる部分は削ったり研いだりして、今度は私が丁寧に銀を入れて継いでいくつもり
です。
前任者の手にやすりで研ぎを入れるとき、さすがに申し訳ない気持ちがして、そっと心の中で
謝りました。

ガラス継ぎは貴重なものなので、そのままにしておくべきだとおっしゃる方達もいるのだとか。
少し迷いましたが、このお皿たちを美しく甦らせる事が、その名もなき職人さん達の供養にも
なる気がして、シャリシャリとやすりで研ぎ始めた日曜日の朝でした。


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