2012年4月26日木曜日

奈良県明日香村にある「岡寺」は別名「龍蓋寺」とも呼ばれる古刹。
義淵僧正という方の開基で、この方の門下には良弁や行基などの名僧が居て、7、8世紀の仏教界にはなくてはならない存在だったようです。

岡寺を訪れたのは何年か前の初夏の頃。
ジリジリと照る太陽の光も、お寺のある小高い山を登って行くにつれて遮られ、木陰に涼しい風が
吹く爽やかな祈りの場所でした。
ご本尊は如意輪観音。
その胎内仏として納められていたのがこの如意輪半跏像。
高さ16㎝の小さな仏像です。
この柔和な表情をした仏様はとても人気が高く、8世紀頃の作と言われていますが詳細はいまだ
わかりません。

いつの頃か火災にあったと思われ、表面が炎に焼かれてまろやかになっているのが、より優しい印象を与えています。
ここは草壁皇子(くさかべのみこ)のお住まい「岡宮」があったとされる場所。
この仏像には、若くして亡くなられた悲劇の皇子の面影が宿っているのでしょうか。


木漏れ日がちらちらと射す岡寺で、天武天皇と持統天皇、この強力な両親の元に生まれた草壁皇子の決して穏やかでなかったであろう短い一生を想いました。

如意輪半跏像のゆるやかな優しい表情は、想像を絶する「悲劇」を経験した人の深い諦めの面差しに似ているのかもしれません。


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