「名ごりの夢」
幕末の蘭医、桂川家に生まれた今泉みねという方の昔語り。
維新前の江戸のゆるやかな雰囲気、瓦解の時の慌ただしさや悲惨さ、そして明治へ...。
時代の流れを追いながら、みねさんの周りにキラ星のごとく輝いた人々の「回想録」です。
お父様が江戸幕府最後の御典医、桂川甫周であったので、小さい子供の時から彼女のおうちには、
のちに歴史に名を残す若かりし頃の福沢諭吉、成島柳北、宇都宮三郎、神田孝平などが集まって
いました。
この昔語りには、子供の目から見たそれぞれの方との面白い逸話が残されています。
そのほか、そのころの隅田川、両国の花火、江戸時代のお芝居見物、雛まつりや初午まいり、七夕や浜遊びの想い出。彼女を育てたおば様やお身内の方のこと、そしてなにより...お父様のこと。
人々の記憶から忘れ去られた良き想い出や、優しい春の眠りの様なお話が、この本にはぎっしり
詰まっています。大好きな一冊。
平凡社、東洋文庫版。この本自体も、もはや「昔」となった昭和38年が初版です。
0 件のコメント:
コメントを投稿