2018年12月16日日曜日

no.1195 akou-kai 2018

だいぶ日が経ってしまいましたが、9月30日に浅草の見番で息子の日舞の流派のお浚い会
が開かれました。
当日はなんと台風上陸の日(涙)
いらして頂く方達のお帰りのこともあるので本当に心配したのですが、おかげさまで台風の
進み具合が思いの外遅く、雨風が酷くなるのが夜遅くにずれ込んだので助かりました。


浅草の見番という所は、芸者さん達のお稽古場。
照明も大したものがなく、客席と舞台が地続きなので演者はかなりの緊張を強いられます。
あぁ。いつもの深川江戸資料館だったらどんなに良かったかと何度思ったことか。
緞帳も重厚なものがあるし。背後には美しい松のお屏風もあるし。照明も。舞台も。そして
お客様の客席も美しいし。
でも資料館は区の持ち物なので日程もクジ引き。運も左右するので仕方ないですね。


息子の今回の演し物は「京鹿の子娘道成寺」
二年間。学校や部活、そのほかのお稽古ごとや塾の合間をぬって少しずつ少しずつお稽古を
積み重ねて来ました。


最後の一ヶ月の追い込みは本当に我が子ながら頭が下がりました。
部活の剣道が終わったあと、その足で錦糸町のお稽古場へ行き2時間のお稽古。
ほとんど夜中に戻り、食事。勉強。
そして朝晩の行き帰りの電車移動中にはそのお稽古の動画の確認。復習。その繰り返し。


昨年の夏には一緒に和歌山の道成寺にも出かけました。
玉三郎さんの娘道成寺のDVDも何度観たことか。
その甲斐あってか最後の一週間には綺麗な所作のなかにも「恨み」や「慟哭」などの微妙な
感情が現れて来ていました。15歳で。こんな感情の機微を表現できるようになるんだ。
私は通常あまり息子を褒めない母親なの。でも。今回は。なんて言うか。
深く感じいりました。


途中、舞台上の衣装の引き抜きでトラブルがあり「はっ!」と息を飲みました。
後見の方も「こんなこと、初めてですよ!」とおっしゃっていた珍しいトラブル。
私もステージの仕事をしているのでよくこういう場面に出くわすのですが、こういったトラ
ブルの後はなし崩しにダァーッとテンションが下がり、思いもよらぬミスを誘発するもの。
そしてお稽古時のレベルからは考えられないくらいの出来になり、がっかりすることも多い
のですが、この時の息子は瞬時にパッ!と切り替わり、何事も無かったかのように舞台中央
にサーッ!と飛び出て来て次のくだりに向かいました。トラブルで乱れた髪のままに。
この。切り替えの凄さに。不覚にも涙が出ました。トラブルに動じず。ほんとによくやった。


あとで冷静に考えると、やはり膨大なお稽古量がこういう時に役に立つんですね。
冷静に瞬時にマインドを切り替える。
私は人生で。息子の三倍以上の時間を過ごして来てるのに。
今回はそんな大事なことを15歳の息子に教えられました。

お足元が悪い中、前回の藤娘以上のたくさんの皆様にお越し頂きました。
この場を借りて。改めて御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

特に嬉しかったことは。
もともと息子が日舞を始めるきっかけを作ってくれ、でも諸事情があり途中から日本舞踊を
やる息子にちょっと否定的だった知人が終演後
「ごめん。私が間違ってた。訂正する。すごかったよ。龍ちゃん。」「道成寺って聞いて。
何でそんな大曲を。できる訳ないじゃんって思ってたんだ。でも。本当に素晴らしかった。
おめでとう!驚いたよ!」と、そんな風に息子の手を握りしめて言って頂きました。
良かったね。龍ちゃん。本当に良かった。

そして。浜崎現場の皆様もお忙しい中、駆けつけて下さいました。ありがとうー!


動画も撮って頂きましたので、編集が出来上がりましたらyou tubeにあげるつもりです。
ご案内しますので良かったら見てやってくださいませ。
30分の大曲。それぞれのくだりでまったく異なる感情表現が必要な難曲。
今から考えても。本当に。あの時できたのかな。そして私は。本当にあそこに居たのかな。

そんな。夢のような時間でした。


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