2015年6月29日月曜日

no.786 today's lunch & evening meal

熊野本宮へのお詣りが終わってから、高野山に精進料理を食べに行こうか、はたまたいろん
な場所に点在するオーガニックカフェ(和歌山はこういう意識が高い方が多くて、この手の
カフェはたくさんあるの。)か、前回泊まった「あしたの森」というB&Bのランチにしよう
か、すご〜く迷った。

高野山は移動にまた3時間はかかるし、オーガニックカフェは要予約のとこが多い。
じゃあってことで「あしたの森」に電話したら、今日はランチ時にレストランは開けてない
らしい。シーズンオフだもんね。
なので、本宮そばのB&B併設のレストランへ。

タイ風スパイシーライス with サラダ。


と、デトックスティー for アンチエイジング(笑)


お店の雰囲気はアンティック風で素敵。周りのガーデニングもイギリス風で居心地いいし。
お料理もお茶もグッド!
でも…。お店の女性(オーナーの奥様?)の雰囲気がねぇ。
わたしが入った時、お店には誰もいないのに、カウンターのひとりがけの席を強引な雰囲気
で「指定」され。
シーズンオフなんだし、普通は「お好きなお席へどうぞ!」じゃない?
お食事を運んだ時の伝票の置き方がガサツ。「音たてて置くなよ。」
お盆に載せたカトラリーがガチャってそのまま置いたふう。「普通そろえてだすでしょ?」
ちょっと日本的なサービス精神やホスピタリティには欠ける感じがすごく気になったけど、
まぁ、構わない人なんだろうけどね。
もしかしたら海外生活が長いのかもなぁ。いるもんね、海外には。こういうおばさん。

そして夜、和歌山市内に戻ってから、すこ〜しお腹が空き始めて…。
前に雑誌か何かで見たことのある和歌山ラーメンに行っちゃおう!ということで、マルイと
いう有名なラーメン店へ。
店名の「マルイ」は本当は◯の中にカタカナの『イ』が入るの。
そしてなんと!見て!このおネギの量!
私が頼んだのはチャーシュー麺なんだけど、チャーシューなんておネギで見えないし(笑)


ラーメン屋さんって実はひとりで入ったのは初めてです。
女性ひとりはちょっと入りにくいでしょう?
でも、旅の途中ってこともあるし、和歌山で話題のお店に行ってみたかったし、お店の人達
がすごく感じよかったし、初ひとりラーメンは楽しく美味しい体験でした!

飲食業ってさぁ。美味しいだけでも感じがいいだけでもダメで、むずかしいよね。


no.785 a day in wakayama

和歌山の朝。この空の色!
なんか空気が違うんだよなぁ。太陽の光の強さもまったく違う。


ホテルのある和歌山市内から熊野本宮までは車で3時間半。とおっ。
なので8時にレンタカーして、コーヒー片手に阪和自動車道、白浜から中辺路ルートを辿
って一路熊野本宮大社へ。
途中かなりぶっ飛ばしたので11時前には到着です。懐かしい!熊野本宮。


はるか昔に姉と来た雪の日も、5年生の息子と訪れたカンカン照りの夏の日も、つい半年前
にひとりでお願いにあがった真冬の身を切るような寒い日も、ずっと変わらないこの佇まい。

で、この階段だぁ〜(涙)
でも!わたくし最近ジムに通っておりますので、実は全然平気なのでありました〜。


熊野大社は詣でるお社が四つあるのです。
須佐之男之命様。そのご両親の伊邪那岐/伊邪那美之命様。そして、須佐之男命のお姉様に
あたられる天照大神様。
境内は撮影禁止だったのをつい忘れて撮影してしまいました…。ごめんなさい。
でも…なんて綺麗!


ご挨拶が送れたお詫びと、息子にあった学校に行かせてくださったお礼。それやこれや長々
としたお願いをしていると、ふうわりふうわり、風がそよいで頬をなでていきます。
なんだか「よく来たね」って言ってくださっているよう。
今回も昇殿参拝をしようと思ったのですが、またたくさんのご下賜のお札やらがついてきて
しまうので、社殿の修復の奉賛金を心ばかりですが奉納することにしました。

午前中の「氣」のいい時間帯に、なんとか伺うことができて良かった!
あれやこれやと欲張らないで、ひとつの旅にはただひとつの目的を。
その方が自分の想いも散漫にならずブレなくていいってことに、やっと最近気がつきました。


no.784 wakayama again

地方追加公演の神戸、無事に終了!
あとは横浜アリーナのファイナルを残すのみです。

息子の受験合格をご祈願したままになっていた香取神宮に先日お礼に伺えたので、神戸
終わりで和歌山の熊野本宮大社にもお礼方々ご報告にお詣りに行くことにしました。
新大阪で「くろしお」に乗り換え。
最近、仕事終わりでまったく知らない土地の在来線にのることが多いなぁ。
ちょっと緊張するけどね。かなりワクワクしてたりして(笑)


女性専用車輌があるんだぁ。夜の移動だと、何かあったらこわいしね。


新大阪での待ち時間にスタバでレモンケーキとカフェミストを買って「くろしお」に乗り込
みました。これでやっとスイッチオフ。


夜の車窓からね。いろいろな光景が一瞬だけ見えるの。
あたたかい電球色のリビングのライトに照らされた幸せそうな家庭や、蛍光灯のうすぐらい
白々しい光のなか、いっぱい洗濯物がかかった物があふれたアパートの部屋や。
こんな遅くに大きな塾のリュックを背負ってスマホを見ながら歩く眼鏡をかけた小学生や、
自転車に乗ったほろ酔い加減のご機嫌なおじさんや。


以前、ニューヨークに出張に出た時、ちょうど真夜中にアラスカの上空を飛んでいて。
その時、いろんなことがあってかなりセンチメンタルなモードだった私は、眠れずにずっと
真っ暗な窓を見つめていました。
すると遥か遥か遠くの地平線らしき場所から(なにしろ真っ暗だから。まわりはきっと何に
もない雪の平原なんだと思うんだけど。)車のライトが時々揺れながら、ゆっくりゆっくり
暗い闇の中から現れ出て、おなじ速度でゆっくりゆっくり遠い彼方へと消えていきました。

あの車はどんな人が運転してて、何を思いながらどこに向かっているのかな。
いくつくらいの人で男の人かな。女のひとかな。
どんな生活をしてて、どんな声で話すのかな。
愛する恋人や大事な家族はいるのかな。
まさか数千メートルの上空から、その人の運転する車のライトをわたしが涙ぐみながら見て
たなんて絶対思わないだろうな。一瞬だけつながった見ず知らずのだれか。

いろんな人がいて、いろんな人生がある。

真夜中の在来線。日曜日の夜。


2015年6月27日土曜日

no.783 butterfly

蝶は異界からのお使い。魂が現世に顕われたものとも。
先日の香取さんへのご参拝といい、この器の完成といい、最近はちょっと蝶に関係すること
が多い気がする〜。
胡蝶の夢。この世はほんとうに蝶の観ている「夢」なのかもしれないね。
エリザベス・キューブラー・ロスの本で読んだけど、病いなどで死にゆく子ども達はみな、
なぜか「蝶」の絵を描くんだって。
アウシュビッツの壁に描かれた無数の蝶の絵など、ほんとうに不思議な逸話が蝶には多い。

平和島の骨董市で手に入れた、大ぶりの、でも持ってみると拍子抜けするほど軽い蝶の変わ
り深皿。
ところどころ亀裂が入ったり、欠損があったりしたものを今回は「金」で継ぎました。


小さい傷ばかりなのですが、欠損したところは錆漆(さびうるし)で成形したりしたので、
かなり時間がかかってしまった。
お皿の縁を金で新たになぞろうかなとか、所々消えている蝶の図柄に色を入れてみようかな
とか、更に手をいれることを考えてはみたのですが、やっぱり最小限の補修にとどめたほう
がこのお皿が生きる気がして、これで完成としました。

朝鮮銀行のお偉いさんの邸宅から出たというお皿。
これを売ってくれたイマドキの骨董商の若者にちょっと見せたいな。私の金継ぎの直し。


no.782 appreciation

先日、姉が「今日うちに帰って玄関のドアを開けたら、ふいっと蝶が一緒に舞い込んで来て。
そのままふわふわと飛びながら神棚のお札にとまったの!あんた、龍汰の受験のお礼に行った
んだっけ?」と聞かれ。
行ってません。希望校落ちたし(苦笑)

でも…。あの息子が、毎朝5時に起きて(!?)楽しそうに学校に行ってるし、勉強も剣道
も日舞も頑張ってるし、生徒会(!?)なんかもやってるし。
やっぱり今の彼に相応しい学校に行かせてもらってるのかもしれないなぁ。
そんなわけで、半年近くたってしまいましたが、思い立ったらなんとやらでまずは香取さん
に御礼参りに伺ってきました。

行ってみて気づいたのですが、ちょうど「夏越の大祓」別名「名越の祓」の時期。
大祓(おおはらえ)とは、知らず知らずのうちに犯した罪、穢れをお祓いし、病気や災いを
避けるための神事のことです。
この茅の輪をインフィニティのマークの様にくぐって無病息災をお祈りするの。


なんて青い空。そしてなんて瑞々しい緑!


気持ちの整理がつくまでとっても時間がかかってしまったけれど、この半年の時間を経て、
いい節目の時期に御礼に伺えて良かったなぁって、なんだかとっても嬉しくなりました。

わたしの産土の美しい神様「香取神宮」
御礼に伺うのが本当に遅くなり申し訳ありませんでした。そしてありがとうございました。


凛とした黒漆の美しい端正なお姿。まるで気品ある貴婦人のように麗しいですねぇ。


2015年6月21日日曜日

no.781 lunch

歳とってくると、食事は「できるだけ素材のいいものを少しだけ」ってならない?
手のこんだ濃厚なお料理も一口目は感激するんだけど暫くすると飽きちゃって…。
新鮮なマグロの美味しいところを少しだけ。
新鮮なお野菜の旬なところを少しだけ。
美味しいワインを少しだけ。
美味しいコーヒーも美味しいスイーツも少しだけ。

で、ある日のひとりのお昼。


カボチャを摺り下ろして作ったスープ。ちなみに作ったのは姉(笑)
生協で手に入れてる北海道/根釧台地のハムとチーズ。
そして専門店で買った絞り立てのオリーブオイルと、カルピスバターの有塩タイプ。
こないだ打ち合わせで六本木に行った時に買ってきたPAULのパンをひとかけら。
オリーブ入りとクランベリー入り。
オレンジマーマレードはこれも生協で取り寄せてるイタリア産の少量もの。

バターナイフは、昔々、代々木上原のアンティーク屋さんで購入した私専用なの。
実家から持ってきたバターナイフも数本あるんだけど、どうも持ち手といい重さといい、これ
じゃなきゃイヤなんだよねぇ(笑)

で、先日、恵比寿で買ってきた猿田彦コーヒーをドリップにて入れて、アーモンド・チョコは
小皿に3粒と!これで完璧!


歳をとって来ると、素材の良いもの少量と、自分にしっくりくるものを少しだけ持っていれば、
案外、てゆーか相当、幸せなのかもねぇ。

あっ。言い忘れましたが、実はキッチンでスツールで頂いてます。そこんところは、かな〜り
いい加減(笑)


no.780 the memories of abbey road studios

こんな雨の日はクローゼットの整理。
なんでこんなものを取っとくかなぁ、と自問自答しながらの大掃除。
古い写真をつめている大きな箱を開けると、懐かしい写真が出てきました。

Abbey Road Studios
日本からの仕事の依頼で何度かブッキングしたことがありました。
これはエルビス・コステロのバックバンドだったThe Attractions/アトラクションズのメンバー
とレコーディングした時のもの。
The Beatles/ビートルズが使っていたStudio 2 でレコーディング時に撮影したんだった。


ドラムのピートはじめ、スティーブもブルースも、皆さん、本当によく飲む方達で(笑)
アビーロードはスタジオ内にレストランがあるので、そちらでお食事も摂ってもらっていたの
ですが、お食事代よりもお酒の代金が高額になったことを覚えていますwww
まぁクライアントのSONYがまだまだ力をお持ちの時だったので。
でもいま考えたら、世にも贅沢なレコーディング!
このあと、皆でピートを送りがてらリッチモンドまで飲みに行ったんだったなぁ〜。

聖地。Studio 2 。やっぱり今でも何か不思議なアトモスフェアがあるところ。


一度、ここも、経営難でEMIが売却するという噂がありましたが、世界中からのラブ・コールで
存続することになったはず。いまはどこが管轄してるのかしら。


別プロジェクトでマスタリングで行った時に、スタジオの人に「今日は Sir が来ているよ。通り
に車を待たせてる。」って言われて、「サーって誰?」の私の問いにアシスタントから返って
きた答えは「サー・ジョージ・マーティン」
歴史がいまも脈々と生きてる場所なんだなぁってことを実感。

すぐ落書きされちゃう道路標示。
これは息子とこの前を通りかかった時、取り替えたばかりなのが珍しくて撮った写真。


その時まだ5歳だった息子にビートルズの話をして聞かせましたが、彼はコヴェントガーデン
にあるロンドン交通博物館のことでアタマがいっぱいで、全然とりあってもらえなかった(笑)

でもいつか、あの時、自分があそこにいたんだって、そんな場所の空気をあの時の自分が吸っ
ていたんだって、ちょっと思い出してくれればそれでいい。


no.779 jungle garden

ジャングル…。
虫がこわくて庭に踏み込めないよぉぉぉ〜(涙)
ちなみにここは、駐車場から庭に至る道。ほんとは、ハニーなんとかって言うイギリスの石
を敷き詰めた小道になってるんだけど。
石なんて… 見えないし。


ガーデナーの中村さんは、ここのところお忙しくて来られるのは1ヶ月先になるそう。

誰か… 助けてーーーーーーーー!


2015年6月16日火曜日

no.778 sarutahiko coffee

ロジェ・カフェでゆっくりしたあと駐車場まで歩いていると、前から気になっていた「猿田
彦コーヒー」の看板が!


ちょうど家のコーヒーが無くなっていたのを思い出し、豆を買いに立ち寄りました。


選んだのは「panama elida-natural」と「classic french」
自宅に帰って早速「elida-natural」を飲んでみたら、少し酸味があってフルーティーな風味。
この飾らない包装やお店のスタッフの飄々とした、でも素直な対応が、なんだかとても新鮮
でした。


カフェ文化。
いまや海外に引けをとらないレベルになって、なおかつ爽やかな若者たちの日本盤「繊細な
ホスピタリティ」が嬉しい!
こんなお店がどんどんできると人生がもっと豊かに楽しくなるのにねぇ。
これ、かな〜り大事なこと。


no.777 loger cafe ebisu

昨日は暑かった〜。もう真夏の陽気ですね〜。
そんななか、制作のりえちゃんと恵比寿でお茶を飲みました。ロジェ・カフェ。


以前、しこたま青山で飲んだあと、深夜近くに立ち寄ったカフェ。
むかし下落合にあった午前4時までやっていた行きつけのカフェになんとなく似てる雰囲気
で、「えっ。こんな雑居ビルにカフェがあるの???」という意外性もアジアっぽくて好き。
風通しいいなぁ〜と思ったら窓開けてるし(笑)


午後から会ったので、りえぞうはティラミス、私はバナナケーキのスウィーツタイム。
りえちゃん、美人〜!息子がこの写真を見て「あっ。美人さんだっ!」だって(笑)


もうひとつの打ち合わせが午後6時からだったので、りえちゃんが別の打ち合わせに行った
後もしばしひとりで読書など。
蒸す一日だったからね〜。さっぱりとクランベリーのソーダ割りをオーダー。


ひとりでゆっくりできるこんなカフェが身近にあって、今日はここかな、明日はそこ?って
いう風にその日の気分で選べるお店の選択肢があるといいんだけど。
センスや文化はなかなかね〜。需要があっても伝播しない。
やっぱり中途半端に田舎はダメだなぁ。どこにでもあるAEON MALLみたいな、味気ない大
型店ばっかりで。
あっ、これはわたしの住んでる町の話です〜(笑)


2015年6月12日金曜日

no.776 kin-tsugi

昨日は久しぶりに金継ぎのお稽古の日。

もうなにしろね。長いこと時間がかかっちゃって。
かけたお皿や割れた壺など、あと7点は作業中のものがあるの。はやく仕上げないと。

初期伊万里の鳳凰皿。やっと金粉を蒔くところまで来ました。


これから蒔いた金粉の箇所を粉固め/ふんがため(もう一度漆を塗って固める)して、また
乾燥させ、今度は磨きに入ります。
これがなかなか根気のいる作業で(泣)
まぁ、私なんて普段の生活は異常にせっかちだから、これくらい根気のいる作業をやって、
たまには耐え忍ぶことを学ばないと人間としてのバランスが悪いよねぇ(笑)

仕事やら息子の中学の保護者会やらでお稽古の振り替えがたまっていたので、昨日は午前と
午後、丸1日の金継ぎ三昧でした。
根をつめる作業なのであんまり食欲なし。デキャンタのコーヒーとシナモントースト。


金継ぎを教えてくださっているくぼ先生は、以前からの計画通り、12月に岡山に移住され
てしまいます。
それまでには、なんとか作業の目星をつけないとね〜。
人としての、またひとりの女性としての、そして作家としての仕事に対する腹の括り具合。
人の好みが難しい(すぐ依存するジコチューの甘ったれがキライだからさぁ。)偏屈な私が
共感できる数少ない女性のなかのおひとりです。まだお若い方なんだけど。
お別れするのは、もうほんと残念。

岡山では購入した古いお宅をひとりで改造中のくぼ先生。
ご自分だけで張り替えた(!?)床に、漆を塗った写真を見せて頂きました。
素敵なんだよぉ〜。この目で見たいなぁ〜。

岡山まで、月1回、お稽古に通おうかなぁ。


no.775 one rainy day

碧い紫陽花。
お向かいのお宅の方から一輪、回覧板と共に頂きました。
なんて素敵な碧(あお)


そしてうちのおじゃるはお昼寝です(笑)


或る雨の日。



2015年6月7日日曜日

no.774 hikone this & that

湖東焼きなるものの存在を知ったのは、いつかの長浜への旅。
黒壁スクエアのアンティークショップで、ずいぶん綺麗な染付けだなぁ、と思わず手にした
のが湖東焼きの小皿でした。
彦根藩の焼き物だった湖東焼きは、直弼公暗殺のあとの職人の離散により、ごく短い期間の
制作だったために品数は少なめ。骨董店では比較的高めのお値段がつきます。
染付けだけではなく赤絵や九谷っぽい色絵もあるようですが、わたしはやっぱり藍の色が美
しい染付けの器に目がいきますねぇ。

その湖東焼きの再興がなされている彦根の「一志郎窯」という所で、絵付けや作陶の体験が
できると聞いて、1日目の夕方に伺ってみました。
気難しそうな芸術家肌のおじさんが出て来たらヤダなぁ、なんて少し不安な面持ちで暖簾を
くぐったのですが、意外なことに応対に出てらしたのはなんと綺麗な若いお嬢さん。
ご自身も作陶を勉強してらっしゃる比嘉さんという方で、お仕事場にちょっと場所を設けて
頂いて湖東焼きの「絵付け」なるものを体験してきました!


高温の窯で焼くと、黒く見える部分が藍になり、ベージュの部分が白い磁器の色になるそう。
初めてだったのに、すごく手のこんだ図柄をサンプルにしてお皿の真ん中に施してしまった
ので、めちゃくちゃ時間がかかってしまいました。
周りに描いた模様は、くたびれたので適当に自分で考えた図柄。緻密さの差があり過ぎ(笑)
約一ヶ月後に作品がうちに届きます。楽しみ〜!

さて、お腹が空いたので、一志郎窯の素敵な陶芸家、比嘉さんにご紹介頂いたお蕎麦屋さん
で腹ごしらえです。
ごぼうの天ぷらの載った冷たいお蕎麦をオーダーしたら。わぉ〜!このボリューム。


お蕎麦は「伊吹そば」と言われる御前蕎麦で、上品な美味しさでした。
参勤交代が行われていた江戸では、あまりに彦根のお蕎麦が美味しいので、彦根の藩邸に江
戸前のお蕎麦を差し上げるのは憚られたらしいですよ。
これはお蕎麦屋さんのメニューに書かれていた口上の受け売り(笑)
伊吹そば。あんまり美味しいのでお土産に買って帰りました。

彦根。また来たいなぁ。今度は歴史好きの息子も連れてくるかな。


no.773 abura-hi-shrine 2

お住まいが敷地内におありになる油日神社の宮司さんは、到着のご連絡を入れると気楽な佇まいで山門で待っていてくださいました。
右手奥にある宝物館。
依頼があれば可能な限りいつでもお開けしていますよ、とおっしゃりながら、重たい宝物館の扉を開けてくださいます。

そしてまっすぐにこの面の前へ。福太夫の面。
白洲正子の「近江山河抄」を読んでから、ずっとずっと見たかった面。
やっと会うことができました。



右側は同時期に使用された翁の面。



もともとは農耕期の大切な節目の時期に村人達によって奉納の舞いが行われ、その折に使用
されたものだとか。
舞の形状も、そしてお装束も、明治初期にはすっかり途絶えてしまったとのこと。
もうかつての面影をしのぶ文書も、その時の思い出を語れる人もいなくなり。
文化というものは、敢えて残す努力をしなければ、こうして煙のように消えてしまう儚いも
のなんですね。
もう誰もその時の気配は二度と味わうことはできない。

当時のお祭りの様子。右下に獅子舞のお装束が見えるでしょう?


これがその時に使われたであろう獅子頭。表状がユーモラスでほんとに可愛い。


お獅子はふたつとも残されていましたが、古い狛犬は片方が失われてしまっていました。
ひとりぼっちで寂しそうだけど、おどけてウィンクしているようなキュートな吽形の狛犬。


「世襲というものは賛否両論ありますが…」と宮司さん。
「ひとつの家族が守ってきたからこそ、ようやっとこれらの宝物を後世に残してこれたんじゃ
ないかと思っています。お金になる価値があるからとか、目先の益にとらわれてしまう人の
手に渡ってしまったら散逸してしまったでしょう。今までも、そしてこれからも守るための
努力をしていかなければなりませんね。」

ここ油日神社の20代目にあたるという宮司さんのお言葉には、歴史を背負って生きてこられ
た方の重みを感じます。
私なんて、本当にこういう歴史のあるお家に生まれた方を羨ましいと思うけれど、なってみ
ないとわからないたくさんのご苦労がおありになるんでしょうね。


no.772 abura-hi-shrine

今回の小旅行の目的。
油日神社の古面「福太夫」を拝見しに、2日目は朝から車で出かけました。
宮司さんとのお約束は11時。お待たせするわけには行かないので早めの出発です。
近江の国はここ最近興味があって何回か訪れていますが、なにしろまだ土地勘がないために
思いのほか時間がかかることがあって。
彦根から甲賀までの国道を使った快適な1時間半のドライブ。

油日という珍しい地名。
もとは油日岳の山頂に油の火のような光を放ちながら油日神が降臨したと伝えられ、それが
土地の名前の由来となっているとか。

すこし雲がかかっていましたが、時折、陽が射す五月晴れの清々しい日。
静かな村の一角にその神社はありました。


そよぐ風の葉擦れの音。どこかから聞こえる水の流れる音。鳥のさえずり。虫の羽音。


本殿はこの能楽堂に守られるようにひっそりと裏手にあります。こういった造り初めて見た。
創祀年代は不詳とありますが、正史に878年として、ここ油日神社の記述が見られるそうで、
その前からこの地にあったとするとかなり古いお寺なんですねぇ。
油日大神を祀る神社なので、油関係の会社の崇敬を集めているよう。奉納の油。


新しく立て替えたり、観光のために増築したりしていない古い境内は、よく映画の撮影にも
使われているそうです。
こういった景色を残す古色蒼然としている場所は、もうそうそう残ってないですもんね。

私がここを知ったのは白洲正子の「近江山河抄」で。
観光地化されていない場所を維持するのは大変なご苦労がおありかと思うのですが、どうか
このまま、往時の姿を忠実にとどめたまま、いつまでもずっとこの地に在って欲しいと思う
数少ない場所。

山門前の清らかな小さな流れの淵で、緑色の小さな一匹の蛙がまるで哲学者みたいにじっと
何か考えこんでいるような様子。それがなんだかとっても愛おしかった。


2015年6月6日土曜日

no.771 hikone-jo

彦根城の宝物館。
文化水準が非常に高い藩だったんですねぇ。
能楽、雅楽、蒔絵、古文書…。ほんとうに様々な一級品の宝物があります。

まずびっくりしたのは井伊家のテーマーカラー。「赤」と「ゴールド」なんだぁ。
超モダンでしょう?


絵巻物に描かれた合戦の様子。井伊家の軍勢はすぐわかるね。真っ赤だもん(笑)


いくつもの鎧の展示がありましたが、すべて赤が基調。素敵!


笙。



小面。


浮き彫りになった立体的な源氏物語の飾りもの。


そして私が一番気に入った硯箱。象の図柄が素敵。筆置きも見事ですねぇ。


お庭のお茶室でお抹茶のご接待。


お菓子の銘は「埋木/うもれぎ」
井伊直弼公はお兄様が何人もいらしたので、当然、自分は家督は継げないと思い自分の家を
「埋木庵/うもれぎあん」と名付けていたとか。
ご兄弟の不慮の死が重なり、結果、彦根藩主となり、江戸で徳川幕府の大老にまで登りつめ
て桜田門外の変で殺される運命に。
埋木のままであったなら、この穏やかな風土の中で静かな人生を送れたかもしれないのにね。

うねる時代潮流のなかで大きな岩となり、流れを変えるお役目を担った方だったのか。