2017年4月23日日曜日

no.1060 okayama kibitsu-jinjya

リハーサルの合間に仕事の顔合わせで岡山に行って来ました。
ちょうど五月晴れの美しい日。まさに「晴れの国/岡山」ですね。
空港からレンタカー、しかも朝早い便だったので、少し無理して合間に興味のあるところを
周ってみました。

まずは備前国の大社。岡山市北区に鎮座する吉備津(キビツ)神社。ご祭神は吉備津彦命。
桃太郎伝説の発祥の地です。


本殿は入り母屋の千鳥破風を前後に二つ並べた珍しい造り。上から見るとカタカナの『エ』
の字型になっているんだそう。
建築学上は「比翼入り母屋造」という建物。でも、全国唯一の様式なので単に「吉備津造り」
とも呼ばれているのだそうです。壮麗にして優美。


社務所傍の大銀杏。新芽が出始めていて若々しく美しい緑が芽吹いています。


午前中の氣のいい早い時間。参拝客も少ない。せっかくなので、ご祈祷をして戴きました。
吉備津神社独特のご神事「鳴釜(なるかま)神事」とのセット。
鳴釜神事とはご祭神、吉備津彦命に祈願した願い事が叶うかどうかを釜の鳴る音で占うとい
う古式ゆかしいご神事のこと。
この美しい回廊を下って行くと右側に御釜殿という建物があり、その内で執り行われます。


志が叶うほど釜の音が高く鳴ると言われていて。
釜で湯を沸かし、その上のセイロの中で器に入った玄米をふり、その時になる音で願い事の
吉凶を占うとか。
その間、神官の方がずっと祝詞をあげていて下さいます。


もちろんご神事なので撮影禁止。この画像は神社にあったポスターを写させて戴きました。
釜の鳴る音。これが想像していたものとまったく違っていて。唸るような大きい音。
その時々で、鳴りが小さかったり、ほとんど聞こえなかったり、荒々しかったり、優しく響
いてみたりするんだそうです。
中にはご夫婦でいらして片方の方が何も聞こえなかった、ということもあったとか。不思議。
上田市秋成の雨月物語にも「吉備津の釜」という物語があるそうで(あったかな〜。昔、読
んだんだけど。)とても古い神事が脈々と受け継がれて来たことがわかりますね。

ご神事を受けるまで時間があったので、神社のそばを少し歩いてみました。
吉備津神社って、とっても広い神社なの。
昔の形態を今も色濃く留めているところです。時代劇に出て来そう。
弓道場もあり、近くの学生さんが弓を射ていました。素敵。


なんとも言えず愛嬌のある狛犬。いつからそこにいるの〜?


鳥居の周りは昔の栄華を彷彿とさせる門構えの立派なお家が残っています。
昔は参拝帰りの門前客の憩いの場となった旅籠屋、料理屋、遊郭などが軒を連ねていたよう
ですが、いまはもうそんな片鱗はすこしも見当たらない閑静なところ。
鳥居傍のこのお宅は本当に素晴らしい門構えの旧家。でも、もう誰も住んでいないようです。


かつて、たくさんの人が生きた場所。
話し声、笑い声、子供の遊ぶ声、夕餉の匂い、涼しい風、線香の香り、近くのお寺の鐘の音。
枯れかけた門前の松(シンボルツリーだったんでしょうね。)の下に佇んでいたら、そんな
異次元の風景が、一瞬、わたしの傍を風のように通り過ぎて行った気がしました。

懐かしく愛おしい気配。もう二度と見ることのない。



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